FPSの歴史を解説。~1990年代から2024年までの道程を振り返る~

ゲーム紹介

FPSファーストパーソン・シューティングゲーム)は、プレイヤーがキャラクター本人の視点でゲーム内空間を移動し、武器などを用いて戦うことを特徴とするゲームジャンルである。「一人称視点シューティングゲーム」とも訳される「FPS」は、1980年代にそのゲームジャンルを確立させ、2024年現在には、単なる娯楽のみに限らず、競技的な側面からも爆発的に普及するようになった。

この記事では、1990年代から2024年現在までに発売された、FPSの歴史に多大な影響を与えたとされるFPS作品を紹介していく。なお、FPSは 3D RPG、ロボット・飛行機・戦車搭乗シミュレーション、TPS などといったゲームジャンルと相互的に発展してきているが、今回の記事ではそれらの作品については触れないこととする。

1990年代

1.Catacomb 3-D (1991)

Catacomb 3-Dは、1991年にid softwareにより開発されたアメリカ発のFPSゲームだ。「大魔法使い」であるプレイヤーが、地下墓地内で死霊やゾンビと戦うホラーFPSとなっている。

このゲームは、一人称視点のグラフィックという点で画期的なタイトルとなった。一人称視点シューティングゲーム(FPS)というジャンルの先例であり、FPSというジャンルを確立した「先祖」とも呼ばれている。

2.Wolfenstein 3D (1992)

Wolfenstein 3Dは、Catacomb 3-Dに続いてアメリカのid softwareにより開発されたFPSゲームである。プレイヤーは第二次世界大戦中の連合国スパイとなり、ナイフや銃などの武器を使ってナチス兵と戦う。

1995年末までに 250,000 本以上を販売し、前作と同様「3D シューティングゲームの祖」と呼ばれている。インターネットが浸透する以前の時代でありながら、電話回線を用いた通信回線に対応していたことも人気を博した理由の要素の一つである。

ナチス兵や軍用犬と戦うこともあり、ゲームの残酷性は当時の論争の的となった。しかし、それでもゲームの人気は絶対的なものであった。

3.DOOM (1993) 

DOOMは、こちらも同様id softwareにより開発されたアメリカ製のFPSだ。プレイヤーは散弾銃や拳銃などの武器を使って、ゾンビ化した人間や、インプやサイバーデーモンなどといった悪魔を打ち倒しながらゲームを進めていく。

秘密の部屋や隠されたアイテムを見つながら探索を進めていくという、アドベンチャーゲーム的な性質を持っており、このゲームの人気を加速させた。

インターネットの普及していた国々では、当時は画期的であったダウンロード販売が行われ、発売から2年間で1000~2000万人がプレイしたと推測されている。3DCGの技術研究がさかんになるきっかけにもなった作品である。

4.Duke Nukem 3D (1996)

Duke Nukem 3Dは、アメリカの3drealms社が発売したFPS作品だ。プレイヤーはピストルやショットガンなどの武器を使って豚や蛸のようなエイリアンを相手に戦う

従来のFPSにはなかった上下左右の動きが実装され、起爆装置が付いた爆弾などの「罠」を使用できるなど、戦略性が増大した。

プレイヤーから多種多様な戦略性を引き出すような、巧妙に考えられたゲームバランスは、後に販売されるFPSタイトルに大きく影響を及ぼした。

5.Quake (1996)

Quakeは、DOOMの後継作品としてアメリカで開発された、id software社によるFPSゲームである。プレイヤーは、敵を倒しつつ、武器や弾薬のパワーアップアイテム、次のステージへの鍵などを拾ってゲームを進めていく。

なにより特筆すべき要素は、ゲームグラフィックである。以前までのFPS作品は、敵や銃、アイテムといったゲームオブジェクトは2Dで描画されるのが主流であった。しかし、Quakeが登場して以降からは、ゲーム内におけるほとんどのオブジェクトが3Dで描画されるようになった。

また、FPSの歴史においてはじめて一般的なネットワークプロトコルによるオンライン対戦が導入されるなど、革新的な作品となった。

後のFPS発展に大いなる影響を与えたとして、三大FPSの一つとして数えらえている。

6.ゴールデンアイ 007 (1997)

ゴールデンアイ 007は、任天堂から発売されたNINTENDO64用FPSである。プレイヤーはイギリス諜報機関の工作員として、ある衛星兵器の秘密を探っていく。

任天堂発のタイトルということで、日本でのFPSに対する知名度を底上げした作品となっている。ゲームはジェームズ・ボンドシリーズの映画「ゴールデンアイ」を原作としており、ゲーマーに限らず映画ファンをもFPSへの世界に巻き込んだ。

最大4人のプレイに対応したマルチプレイ対戦も、本作の評価の向上に寄与した。なお、こちらのゲームはNintendo SwitchのNINTENDO 64 Nintendo Switch Online 18+で配信されており、Nintendo Switch Online + 追加パックに加入している人は無料で遊ぶことができる。ぜひ遊んでみてほしい。

7.Rainbow Six (1998)

Rainbow Sixは、フランスのUbisoftが発売した、トム・クランシー原作の小説「Rainbow Six」を原作とするFPS作品だ。プレイヤーは特殊部隊の隊員となり、テロリストの撲滅や人質の解放を目指す。

このゲームの最大の特徴は、攻略に精密な作戦立案を要することだ。プレイヤーはチームを編成し装備を決め、敵や人質などの予想位置が記されたマップを確認しつつ、突入経路や武器の使用地点、射撃ポイントを設定するという行動を遂行する必要がある。

こういった独特なシステムと、一瞬の油断が死亡に繋がるというリアリティが、当時のFPS界隈で多大なる高評価を得て、Rainbow Sixは現在まで愛され続ける人気シリーズとなった。

8.Delta Force (1998)

Delta Forceは、NovaLogic社により発売されたアメリカ発のFPSゲームだ。実在する特殊部隊であるアメリカ陸軍第1特殊作戦部隊デルタ分遣隊(通称:デルタフォース)を題材としており、現実の戦争を扱ったミリタリーFPSとなっている。

リアル志向のゲームとなっており、人間らしい動作やリアル銃声が再現されていることが特徴である。敵の銃弾に少しでも当たるとプレイヤーが死亡してしまうなど、なかなかにハードコアだった作品だったが、後の現代戦争ものFPSが開発される引き金となった。

9.Unreal (1998)

Unrealは、1998年にアメリカのEpic Gameが開発したFPS作品である。プレイヤーは、不時着した惑星から脱出するために、敵を倒しながらフィールドを冒険する。

このゲームの革新的な点は、広大なオープンフィールドが用意されていることである。マップの作製には多くのスタッフが携わっており、開発への本気度が伺える。あまりにも美麗かつ広大なマップであったため、発売当時のPCでは重すぎて動かなかったという逸話もある。

また、ストーリー、演出、音楽も非常に良い評価を受けた。後のFPS開発に多大なる影響を与え、Quakeに引き続き、三大FPSの一つとされている。

10.SiN (1998)

Sin、1998年にRitual Entertainment社によって開発されたFPS作品だ。プレイヤーは海陸空対応車、巡視艇、フォークリフト、ヘリコプターなどの乗り物を使いつつ、ゲームを進めていく。

前述した乗り物も然り、敵が持つ武器を叩き落としたり、敵の弱点を狙わなければダメージが入らないなどといった新機能が多く実装されており、現在のFPSゲームにも見られる要素をこのゲームの中で散見することができる

発売当初は不具合などにより批判的な意見も多く、売り上げも伸びなかったこの作品であるが、カルト的人気を誇っている。

11.HALF-LIFE (1998)

HALF-LIFEは、1998年にアメリカのSierra Studios社が発売したFPSゲームだ。政府の研究施設に博士として着任したプレイヤーが、実験事故により出現したエイリアンを倒しながらゲームを進めていく。

従来のFPSでは見られなかった「ストーリー性」に焦点が当てられた作品であり、謎解き要素やドラマ性、仲間との協力要素が加えられている。

これらの要素は絶大に評価され、FPSというゲームの在り方自体を変えるような革新的なゲームとなった。Quake、Unrealに続き、三大FPSの一つとして人気を誇っている作品だ。

12.Thief (1999)

Thiefは、イギリスのEidos社から発売された、PC用FPSゲームだ。プレイヤーは盗賊となり、ステージの各所に配置された金品を盗み出しつつゲームを進めていく。

正面から敵と撃ち合うといった今までの定番FPSとはテイストが異なっており、敵から身を隠しつつ進めていくこのゲームは、いわゆる「ステルス系FPS」の元祖となった。そのため、このゲームはFirst Person Sneaker(FPS) というカテゴリに分類されることもある。

2000年代

1.Counter-Strike (2000)

Counter-Strikeは、2000年にValve Software社から発売されたFPSだ。プレイヤーは、対テロ特殊部隊とテロリストに分かれて対戦を行う。

元々は先ほど紹介したHALF-LIFEのMOD(改造版)として遊ばれていたゲームだったが、その絶大な人気からパッケージ版として発売されるようになった。

「あらゆるジャンルにおいて、世界で最もプレイヤーの多かった対戦ゲーム」としても知られているほどの人気を誇り、世界規模のゲーム大会が開催されるなど、FPSの競技性を世間に広めた作品でもある。

2.Serious Sam (2001)

Serious Samは、ヨーロッパのCroteam社により発売されたFPS作品である。プレイヤーは、人類の未来を託された勇敢な男として、大量のモンスターを銃火器でなぎ倒しながらゲームを進めていく。

戦略性に焦点を置くRainbow Sixや、ストーリー性に焦点を置くHALF-LIFEなどの他作品とはうって変わり、この作品は大量の敵をなぎ倒していく爽快感を重視している。そういったことから、「FPSの原点に立ち返るゲーム」として他メーカーにも大きな影響を与えた。

広大なステージと、美麗なグラフィックにも注目していただきたい。前年に発売された Counter Strikeと比較しても、より精妙にマップがデザインされていることが分かるだろう。

3.Halo: Combat Evolved (2001)

Halo: Combat Evolvedは、アメリカのBungie社が発売したゲームである。プレイヤーは特殊部隊として、惑星を侵略する異星人を打ち倒しながらゲームを進めていく。

この作品は、後に発売されるFPSゲームにシステム面で大きな影響を及ぼした。体力の自動回復、シールド機能、武器の二丁制度、ヘッドショットと弱点機能、打撃攻撃、AIの味方との共闘・・・など、現在の作品にも見られる多くのシステムが、このゲームで初登場した。

Xbox向けとしても発売されたため、家庭用ゲーム機向けFPSを普及させる作品でもある。

4.HALF-LIFE 2 (2004)

HALF-LIFE 2は、2004年にValve Softwareから発売された、HALF-LIFEの続編となるFPS作品である。前作から約15年後の世界を描いたストーリーとなっている。

特筆すべきは、美麗なグラフィックスである。現在発売されているゲームとほぼ遜色ない・・・と言うと過言かもしれないが、少なくとも、当時発売されていたゲームの中では最高峰のグラフィック品位だった。

HALF-LIFE 2は、後に生まれるFPSゲームのグラフィック品位を底上げした作品であると評価されている。

5.Team Fortress 2 (2007)

Team Fortress 2は、2007年にアメリカのValve Software社から発売されたFPS作品だ。REDとBLUの2チームに分かれ、様々なゲームモードに則って勝敗を競う対戦型ゲームとなっている。

キャッチーでコミカル、そしてシンプルなゲーム性が特徴であり、各キャラが固有のアビリティや武器を持つというシステムは、FPSにおけるいわゆる「ヒーローシューター」というジャンルを確立させた。

後に発売されるOverwatchなどの作品は、このゲームの影響を強く受けた作品だ。現在でもアクティブなプレイヤーが多く、Steam版で無料でダウンロードすることができるため、興味があればプレイしてみると良いだろう。

6.Crysis (2008)

Crysisは、2008年にアメリカのElectronic Arts社より発売されたFPS作品である。プレイヤーは古代遺跡を調査中の米国研究員を救出するという目的のもと、北朝鮮勢力や謎の高度技術部隊と戦いながらゲームを進めていく。

現代でも十分通用する、超精巧に作られたグラフィック品質は、語るまでもない。開発機を最大限に活用して作られたこの作品。表示を最高設定にすると、当時の最高峰のスペックを誇るパソコンでも、動作が重すぎてゲームにならないという事態を招いた逸話がある。

言うまでもなく美麗なマップを作り上げたこの作品は、後に発売されるFPS作品のグラフィックス品位をインフレさせた一因だ。

7.Borderlands (2009)

Borderlandsは、2009年にアメリカのGearbox Software社が発売したFPSだ。プレイヤーはハンターとして、惑星に跋扈するモンスターの討伐や、盗賊団退治などにより一獲千金を目指す。

当時、FPSというジャンルでは見られなかった、レベルアップによるキャラクターの成長や、スキルの習得などのシステムが導入されており、いわゆる「ルーターシューター」というジャンルの先祖となった。

広義の意味でのルーターシューターとして、DestinyやEscape from Tarkovなどといったゲームがこのゲームに影響を受けていると言えるだろう。

8.Battlefield シリーズ (2002 ~ 2021)

(動画は2006年発売のBattelfield 2142)

Battlefieldシリーズは、ヨーロッパのDICE社が制作するFPS作品のシリーズである。実際または架空の戦争をテーマとし、大人数でのマルチプレイ対戦が主となるゲームとなっている。

大人数での対戦が主であるため、プレイヤー1人あたりの責任が少なく、兵器の修理や味方の支援などのシステムがあるため、FPS初心者でも活躍することができるのが特徴だ。

これらの特徴から、ライトユーザー向けの作品として大人気を博し、数あるFPS作品の中でもその名はに知られている。2021年には、シリーズ最新作であるBattlefield 2042が発売され、勢いは留まることを知らない。(ただし、最新作は不具合や不正プレイヤーの多さから賛否両論となっている。)

9.Call of Duty シリーズ (2003 ~ 2023)

(動画は2007年発売の Call of Duty 4: Modern Warfare)

Call of Duty シリーズは、アメリカのInfinity Ward社などが制作するFPS作品のシリーズだ。ほとんどの作品において、主人公は新米兵士として戦場へ赴き、各地を転戦してストーリーを進めていく。また、対戦モードも充実している。

PlayStation、Wii、ニンテンドーDSなどの家庭用ゲーム機や、スマホアプリとしてリリースされる作品が多くあり、家庭用FPSを盛り上げる火付け役となった。

スマホ用アプリを除く最新作として、2022年にはWindowsやPlayStation向けの作品であるCall of Duty: Warzone 2.0が無料で配信されている。

まとめ

今回の記事では、1990年代から2024年現在までに発売された、FPSの歴史に多大な影響を与えたFPS作品を計21作品紹介した。

数多くの作品が礎となって、「娯楽としてのFPS」と、今やe-Sportsとまで呼ばれるようになった「競技としてのFPS」の世界を作り上げてきたことがお分かりいただけただろう。

2010年以降には、PUBG: BATTLEGROUNDSやApex Legends、VALORANTといった著名なFPS作品が数多く生まれた。今回の記事では、これらのゲームがその後のFPS界に与えた影響が不鮮明だったため、取り上げることが叶わなかったが、ぜひ自身でプレイしていただきたいと思う。

もちろん、今回紹介した作品以外の多くの作品もFPSの歴史を紡いできたわけであるが、すべてを紹介することは叶わないため、興味がある方はインターネットや書籍などで知見を深めていただきたい。では、記事をご覧いただき、ありがとうございました。

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